尋胡隱君 〜 水・風・花、そして君 〜

今日は、地元青梅の繭蔵に併設するBOX K-I-O-KUにて「うさとの服ファッションショー」のお仕事でした。うさとの演奏仕事は2回目なので、うさと独特の雰囲気にも慣れ、自分らしく歌えたように思います。

うさとのショーは毎回違うコンセプトに沿って、音楽、舞台が作られるのですが、今回は「尋胡隱君」という中国明の時代の漢詩をベースに「水」「花」「風」をテーマにステージが作られました。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~mayugura/live/0804-usato/index.htm

渡水復渡水  川を渡り、また川を渡り
看花還看花  花を眺め、また花を眺め
春風江上路  春風に吹かれながら、川沿いの道を歩く
不覺到君家  いつのまにか、あなたの家に辿り着いた


こんな詩です。

前の日記にも書いたのですが、私は中国語は話せません。音楽ディレクターの水野氏から「漢詩に曲をつけたんだけど、歌ってくれないかな〜」というオファーがきた時は、「正直、無理です!」といいかけたのですが、頼まれると断れない性格なので、「これも何かのプラスになるかも知れない」と思い直しお引き受けしたのでした。

1ヶ月前に中国語の発音レッスンを受け①意味を理解する。②発音を覚える。③メロディに乗せて歌をつくる。④楽器と併せて音楽にする。この過程での中で、一番苦労したのが③でした。理由は今回のステージのために書かれたオリジナルなので、お手本がないということ。かつ、私は中国語の歌を聴いたことがなく、頭の中にまったく言葉と音を結びつけて歌にするイメージが全くないということ。地図も案内人もないままで「中国行きの船」に乗ってしまったという心境でした。

そんな途方に暮れた状況のまま2週間くらい放置(!)していたのですが、偶然にもこの4月にお会いしたNY在住ベーシスト塩田ノリヒデさんから、勉強用にといただいたBei Xuさん(塩田さんproduce)のCDを聴き、バチバチっと光に感電したように道筋が見えました。のだめが宇宙と交信して、曲を理解する瞬間のイメージ・・・(クラシック音楽マンガ「のだめカンタービレ」ご参照)。CDは別の意図で聴いたのにも関わらず、そこに道しるべがある・・・これも音楽が引き合わせる縁なのでしょうか。

Bei Xuさんは、(レコーディング当時)NY在住の中国人ボーカリスト。アルバムではジャズのスタンダードナンバー、中国語のナンバー、そして2枚目のアルバムではユーミンの曲を英語と日本語で歌っています。
ロスト・イン・トランスレーション
ジャズのスタンダードナンバーももちろん良いのですが、母国語である中国語で歌っているナンバーがとても心地よく、中国語の響きが音楽を奏でる美しさがそこにありました。そして、ユーミンの「A HAPPY NEW YEAR」最後のコーラスの日本語の部分で、私の心に迫るものがあり、号泣してしまいました(不覚泣我?)。お酒を飲まずに音楽で号泣したのは人生で3度目です。「中国語の美しい響きを大切に、自分なりの春の情景が浮かぶように、君へ想いが届くように丁寧に歌おう」というヒントと勇気をもらいました。Beiさん、塩田さん、ありがとうございます。


歌を歌う上で、こういった緻密な練習は本来どんな曲にも必要なことなのですが、長いこと数多く歌っていると、どうしても一つ一つが疎かになってしまいます。今回、中国語という初めての言語を歌うことで、当たり前で大切なことを再確認でき非常に勉強になりました。これを踏まえ、他にも水野氏の日本語の曲、スタンダードナンバーを歌いました。緩む水のせせらぎ、咲き誇る花の息吹、柔らかい春の風、が君に届きますように、と。






写真は漢詩朗読、そして私に中国語指導をしてくださったチャンさんと。私の今回の衣装はタイシルクの黒檀染めドレス。でも写真横展開できなーい(どうしてー)。