朝のリレー

先日のお仕事で、某社長さんとお話をしていたときに、企業のCFの話になり、私の好きなCFを紹介しました。私のもっとも敬愛する詩人、谷川俊太郎さんの「朝のリレー」を使ったネスレのコマーシャルフィルム。



「朝のリレー」 谷川俊太郎

カムチャツカの若者がきりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている
   
ニューヨークの少女がほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める朝陽にウインクする
   
この地球ではいつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
   
眠る前のひととき耳をすますとどこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる 
それはあなたの送った朝を誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ



CFで流れているpianoは俊太郎さんの息子、谷川賢作さんが弾いています。


そんなこともあって、久しぶりに谷川俊太郎さんの詩集を紐解いてみました。谷川さんの詩に触れたのは多分小学生のころ。国語の教科書にのっていたとおもいます。谷川さんの詩は、こども向けの全部ひらがなの詩から【「あいうえおっとせい」「ことばあそびうた」】、男女の関係を書いたもの【「女に」】、生死について書いたもの【「生きる」「誰にもせかされずに(死にたい)」】、と幅がひろい。その時の自分の状況や気持ちによって、心が動くものが変わっていくのが面白いです。一生手元においておきたい言葉たち。


今回ふと思ったのですが、多分私の書く文章は、かなり谷川さんの影響を受けているなー、と。言葉のリズムとか、体言止めと使い方とか、私の書き癖でになってしまった「〜ということ」とか。

とかとかとか・・・・・・・「とか」という詩を思い出しました。これとか、なんだかブルースだよね。




「とか  谷川俊太郎

とかとかとか
とかしか言えないの
私とかじゃないこの私
シャワーのしずくが肌にはじける
朝とかかったるい
野菜ジュースの気休めがきらい
かけがえのない一日はどこ


とかとかとか
とかしか言えないの
あいつとかじゃないあのあいつ
自分で自分に返事をするな
愛とかかったるい
優しいふりのキスはいらない
かけがえのない気持ちが欲しい


とかとかとか
とかしか言えないの
あなたとかじゃないそのあなた
よく似た化粧でロボットみたい
人とかかったるい
決まり文句に泣いて笑って
かけがえのないあなたがみたい


とかとかとか
かけがえのない自分になりたい
とかとかとか
たったひとりの誰かに会いたい
とかとかとか・・・・・・